Software Robotでコンピュータ作業を自動化

3/3の記事で、Software Robotという概念に基づいて、GEにて革新的なツールが開発された逸話を紹介した。この技術で何が新たに実現されて、何が変わったのだろうか。

 

実現されたことは、設計者の業務時間の大半を占めていたコンピュータ上での対話型作業の大半が自動化ということだ。たったそれだけのことで、実は、下記に示すように設計業務が根本的に変わることが分かる。

 

1)作業時間の激減(1/5-1/20)と人為ミスゼロ
2)思考と判断という業務へ集中できる
3)人の経験や技術に依存しない
4) より多くの設計方案を効率よく検討できる

 

まず、1)は定量的な成果として、上司や経営層にもわかりやすい。時間激減効果は、このツールを使えばだれでもすぐに実証できる。人為ミスゼロの波及効果は広い。なぜなら、人間が行う作業には人為ミスが潜在的につきものであるから、ミスがないかをチェックする人や作業が発生する。自動化すれば、それらの作業は一切不要になる。

 

最も重要なのは、2)だ。マニュアル作業で行っているときは、作業の方に忙殺され、別の案を考えるのは、作業の合間に行うといった方がいいだろう。ところが手順を自動化してしまえば、本来設計者が行うべき業務である思考と判断に集中した時間が確保できる。1)のように定量的には見えないが、確実に業務レベルが向上するもっとも重要な効果だ。

 

3)は、作業手順を標準化できると言い換えた方が分かりやすいだろう。熟練者しかできなかった複雑な手順も標準化されてしまえば、経験の浅い人でも作業が可能になる。熟練者は、煩わしい作業から解放され、さらに高度な業務に従事できる。組織能力が向上するということである。

 

4)の意味するところは、コンピュータ上でパラメータを変えて繰返しシミュレーションを行うことができるので、手作業で例えば2日で10ケースしか検討できなかたものが、同じ2日で数百〜数千ケースの組み合わせのパラメータスタディを極めて効率的に行うことができる、ということである。これだけ増えるならば、量が変じて質の転換となる。このポイントは、別の大きなテーマになる。

 

繰り返すが、作業を標準化し、手順を自動してコンピュータで行わせるというだけで、これだけの効果が出るのだ。このことは、もっと世の中に知られていいことだ。単純な原理こそが、世の中を大きく変える。Dr. Siu Tongは、Software Robotの概念を想起した時、産業革命を思い出しながらこれらのことを一瞬で見抜いたのであろう。GEは、1980年代にすでにその恩恵をたっぷり受けていた。

 

しかし、日本はソフトウエアの産業革命ともいえる、この技術の恩恵を十分に受けているとはいえない。産業革命前のままである。往々にして、手順を自動化する効果というと、1)の定量的な直接効果だけに着目しがちだが、それだけでは本質を見ていないことになる。2)から4)までの効果も十分に理解してきっちりと抑える必要がある。

 

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                             今日の1枚
2010/3/9
横浜にしばし出かける。いい被写体が至る所にあるので。でも気に入った写真は、たいてい偶然の出会いの時に撮れてしまう。実は、偶然をおびき寄せるために出かけるのだ、ということに気付いた。  -  Lumix FZ20 -
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