設計という行為=設計空間を絞り込む

以前の記事で、「サンプリングから学ぶ=攻撃の要は偵察にあり」というテーマで、サンプリング=探索が重要だという話しをした。なぜかの理由をここで示そう。

たまに、どうしても、抽象的・数学的な表現をしてしまいたいことがある。こういう定義の仕方をすると、難しく複雑だと思っていた物事がシンプルにすっきりと見えてくるので、後がものすごく楽になる。数学嫌いな人には、許して、といわなくてはいけないが、ちょっと我慢して下の文章につきあって欲しい。


設計とは、設計パラメータとその上下限値で規定される設計空間を絞り込んで、1点の設計解を導くための意思決定行為」と定義してしまおう。すると、設計空間の絞り込みを行うための、情報収集すなわち探索をしなくてはならない。サンプリングが重要なわけは、探索と設計空間の絞り込みの両方を行うことができるからなのだ。これは、もう、大声で何度繰り返してもいい、とても大切な事実。なので、太文字だらけです。


サンプリングというのは一般的な用語で、実際の手法としては、実験計画法をはじめとしていろいろなアルゴリズムがある。それぞれに特徴があってその使い分けを理解するには、少しだけ(1日ぐらい)講習を受ければ、誰でもわかるようになるので、ご安心を。世の中にはたくさんのHPがあるので、詳しくはそこを覗いていただくとして、このブログでは、一応サンプリングをいう概念だけを理解していただければ、以降の内容も十分にご理解いただけるはずなので、続けることにして........


絞り込みの意味と効果を、設計パラメータ(Design parameter)が3つ、応答値(Response)が2つの問題で説明してみる。

STEP1)
はじめの設計空間

    • 設計変数1(D1)の探索範囲:0 < D1 <20 (幅20)
    • 設計変数2(D2)の探索範囲:0 < D2 <20 (幅20)
    • 設計変数3(D3)の探索範囲:0 < D3 <20 (幅20)
    • 設計空間 V(step1) = 20 x 20 x 20 = 8000


STEP2)
D1xD2xD3のサンプリングをした結果、次のように探索範囲を狭められることが分かったとする。

    • 設計変数1(D1)の探索範囲:0 < D1 <10 (幅10)
    • 設計変数2(D2)の探索範囲:10 < D2 <20(幅10)
    • 設計変数3(D3)の探索範囲:5 < D3 <15(幅10)
    • 設計空間 V(step2) = 10 x 10 x 10 = 1000
    • V(step1)=8000の1/8に絞り込まれた


STEP3)
さらに2度目のD1xD2xD3のサンプリングをした結果、次のように探索範囲を狭められることが分かったとする。

    • 設計変数1(D1)の探索範囲:8< D1 <10 (幅2)
    • 設計変数2(D2)の探索範囲:15< D2 <20(幅5)
    • 設計変数3(D3)の探索範囲:12< D3 <12(確定!)
    • 設計空間 V(step3) = 2 x 5 x 1 = 10
    • V(step2)=1000の1/100に絞り込まれただけでなく、D3が確定された。


このステップを一般化してみよう。数学嫌いな人が多いと思うけれど、絵とか式を少し使うだけで、ものすごくわかり易くなることがなることがあるので、ちょっとだけ。

設計初期から、最終仕様確定までのプロセスを、スウガクテキに言うと、n次元設計変数(X1, X2, .... Xn)の設計空間(L1 x L2 x .... Ln)をもつ探索範囲を、ある1点に絞り込むプロセスだ。設計空間を絞り込むプロセスとは、

  1. 各設計パラメータの探索範囲を狭めていくことで、探索空間の体積が減少する。→(L1 x L2 x .... Ln)を減らす
  2. 設計パラメータが確定されることで、探索空間の次元が減少する。→(X1, X2, .... Xn)を減らす
  3. 上記の1)と2)を繰り返して、すべての設計パラメータを確定する。

この3ステップが数学的に解釈した、”パラメトリックな”設計行為なのです。
これで、サンプリングの重要性、絞り込み=設計行為の意味、なんとなくでも、雰囲気だけでもおわかりいただけましたか?


もう少しだけ踏みこむと、”パラメトリックでない”設計行為とは、発想であったり、良くいわれる擦り合わせ的な設計であったり、自動化不可能な設計者の思考に依存する、価値の高い部分です。パラメトリック設計が価値が低いとはいいませんが、パラメトリックな設計を可能な限り自動化して効率よく処理してしまうことで、非パラメトリックな部分に、より時間とコストをかけられるわけです。こういう使い分けを明確にするだけでも、結構な業務革新ができるんじゃないかと、いうのが本当のポイントです。




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今日の一枚
San Franciscoから、ゴールデンゲートブリッジを渡った対岸にある、サウサリートというこじんまりとした街がとても気に入りました。海は静か、しゃれた店があり、散歩にちょうど良し、写真に熱中し始めた頃だったので、いい被写体がたくさん。この写真は、対岸のSan Francisco市街をバックにして偶然撮れたナイスな一枚です。

@San Francisco - Lumix FZ10
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