安心できる技術−電子錠が動かなくなった話

アメリカのとあるところに本日着、それなりのホテルなんだけれども、お風呂に入ろうとしたら、どう見ても湯船の栓がない。海外のホテルには、たまに、自分が知らないだけとか、気付きにくいしくみとかあったりするから、注意深く見てみたけれども、やっぱり、どういしたって栓がない。ので、修理サービスを呼んだら、珍しくないなって雰囲気で、部品を探してきて付けて行った。直ったのはいいけれど、不思議なのは、どうすれば、風呂の栓が部屋から無くなるのかってこと。昨晩泊っていた人はどうしてたの?

で、ずーっと前に経験したことを思い出したので、忘れないうちに書いておこう。アメリカの片田舎に泊ったときの話。そこに泊るときは選択の余地がなく、モーテルみたいな外と玄関直結のホテルと、小じんまりしたホテルの2カ所ぐらい。その時は、後者に泊っていて、ある晩のどが渇いて冷たい水が飲みたくなったので部屋の外に氷を取りに行ったのでした。部屋に戻ろうと、カードを何度差し込んでも反応しなくて、でもその時は、電子式カード錠が使われ始めた頃で、そういうトラブルは何度かあったので、発行し直してもらえばいいかと、パジャマ姿で受付に行った。バイト風の女性がカードを再発行してくれて、トライしてもダメ。で、マスターキーでトライしてもらったにも関わらず、まったく反応せず。この時点で、あれ?異常事態?という雰囲気が漂い始め、彼女が何カ所かに電話を掛け始めた。なんだか、いろいろ手を尽くしているようだけれども、一向に鍵が開かず、幸いかな一階の部屋だったので、奥の手として朝になったら外から窓を外すから、別の部屋で寝ていてくれということになった。そのホテルの最上級(といっても、部屋とお風呂が大きかったぐらい)の部屋に移って、とりあえず朝まで寝たわけです。特に、その日は帰国日だったし、部屋が開かなかったらどうしようとは思って見たものの、考えてもしょうがなかった。3時ごろだったかな。

起きても、着の身着のままで、歯磨きもできないので、朝自分の部屋に行ってみたら、すでに見事に窓が外されていて、業者の人達がしてやったりといった風情で部屋に居て鍵を中から開けてくれたのは、その一瞬だけはアメリカンヒーローが目の前に的でものすごくうれしかったのだけれど、やっぱり窓を外さなきゃならないという事態を招いたあなたたち米国の技術は何なのでしょうと、思ったわけです。一方で、世界最高の軍事・宇宙技術を持っているわけだし。これが、2階以上だったら、はしご車付きレスキュー部隊登場だったでしょうかね。鍵が正しく動作するといのは、ほとんど究極の精度で保証できなくてはならないはずで、マスターキーでも開かない電子錠というのはとんでもない設計ではある、特に、ホテルという客商売においては。

そう思うと、従来の日本の技術というのは、安心できる技術が多いんじゃないかと強く感じる。昨今ロバスト設計が進んでいるのはその証左ではある。想定外を連発していた原発世界の人達は、できれば例外だと思いたいけれども、少なくとも日本的ものづくりを支えてきた技術層というのは、仕様に書かれない(想定外のことを)経験に基づいて想定して設計・製造してきた人達のはず。一方でこれからは、仕様書に書かれないことを美徳とするのではなく、どうすれば仕様書に書けるかをしっかり具体化する時代にはなってきている。