ニューヨーク初日の出来事

初めてのニューヨーク。仕事の出張後、土日の2日間だけ立ち寄って覗くことにした。一番やってみたいことは、美術館めぐりと写真撮ること。思いとしては、メトロポリタン美術館、近代美術館(MOMA)、グッゲンハイム美術館、ホイットニー美術館とそうそうたる美術館群をなるべく欲張って訪れたい。次には、ニューヨークは、パリに次いでか同じぐらいに写真の題材になっている都市。ぜひ、その雰囲気の一厘だけでも自分のシャッターで撮れないものかとの、大それた願い。

気張っていったものの、知らない街に行く前は不安が強い。それでなくても二日前から風邪気味で、熱は出ていないものの、鼻水と体のフワフワ感がが抜けない。二日しかないからと、朝一番の飛行機を取ったので、4時に起きて、5時に空港に着き、ゲートに行くと、なんと誰もおらずキャンセルのラベルが。どうも機体の手配が出来なくて、昨日からキャンセルになっていたらしい。じゃあ、なんで発券してしまうわけ?と思ったところで、ぶつける場がないので、怒りを鎮め、発券場に戻る。何がうっとうしいって、カバン、上着まもちろん、ベルト外して靴まで脱がされるセキュリティをもう一度通らないといけないのが、煩わしい。今回は国内線なので、スーツケースも全部持っているから、空港の中を距離歩くのもつらいのだ。一番の不安は次の便が取れるかどうかだったけれど、特に前の客が偉く時間かかっていたので、結構不安ではあった。

それは杞憂に終わり、次の便が取れたとはいえ、6時発が、10時発になり、4時間も時間をつぶさなくてはいけない。航空会社から6ドルの朝食券をもらったので、ダンキンドーナツで、ホットサンドとコーヒーで体を温かくすることにした。前向きに考えることにし、NYの下調べをほとんどやっていなかったので、行く場所の確認して地図に印をつけるなどしていたら、目が字を追えなくなり、急速に体が活動停止的になってきたので、仮眠を取ることにする。幸い、待合室の奥の方に、体を伸ばせる長椅子があり、上手く体制を整えその前後にスーツケースやカバンを置いて、万が一熟睡状態になったとして、盗まれないように配置を考える。ここらへんは、学生の頃駅での野宿や仮眠で鍛えてあるので、その本能で対応できた。さて、iPhoneのアラームもセットして、寝ようとしたのだけれど、あれやこれや一度に出来事が生じたので、体は眠いのに、頭が興奮状態から戻らない感じ。熟睡はしなかったけれども、1.5時間横になっていたらそれなりに休息を取れて、調子はよくなった。

45分だけのフライトなので、人数少なく、プロペラ機だ。20人程度が乗るバスのよう。席の真横にプロペラがあるので、回転し始めるのをみていたら、間違ってバードストライクが起きてしまたら、羽がこっちに飛んでくるんじゃないかという妄想を抱いてしまった。ジェット機の半分ぐらいの高度で飛ぶので、雲の合間を縫ったりして意外と爽快な雰囲気、ただし、音がうるさくなければ。

空港に着いてからも、シャトルバスの運転手がいい加減で、先に乗っていた私と夫婦二人組を下して、後で来た11人組の方を先に乗せていってしまい、なんやかんやで30分は余分に次のシャトルを待った。トンネルを越えてマンハッタン島に抜けたら、運転手が“Wellcome to New York!”と叫び、雰囲気出しに気を使ってくれたのはいいけれども、私のホテルの近くを通ったのに止まらず、別の乗客のホテルを先に回ったから結局一番最後に。結局ホテルに着いたのは、もう午後の2時半というとんでもない時間になったのでした。当初の予定どりであれば、8時には到着していたはずなのに。

それでも気を取り直して、まずは美術館を一件回ることにし、一番遠くにあるグッゲンハイム美術館に行くことにした。カンディンスキーのコレクションが豊富なことで有名だというのは、直前にガイドブックで知ったので、勇んでいくことに。しかし、すぐに地下鉄でつまずいた。一番最初に乗るべき線の出入り口に黄色いテープが張ってあって、入れないどころか、要は動いていない!お巡りさんに聞くと、シャトル線という別のが動いているからそっちに行けというのだが、よりによって、一番広くて込み合う駅(Times Squareの真下というのは後で知った。)なので、方向が全くわからない。シャトルのSマークであることを理解してたどり着いて、初地下鉄。グッゲンハイムからは最寄りの駅まで、15分ぐらいは歩く。そこは、一眼デジカメを持ってきたので、パチパチとシャッター切りながら歩く。

グッゲンハイムは結論だけ言うと、がっかり。企画展が、車のパネルを捻じ曲げてくっ付ける前衛美術家の展示がほとんどで、私にとっては肝心のカンディンスキーは、10枚もあっただろうか?他のコレクション展示も少なくて、欲求不満になった。時間はまだあるし、地図を見てみると、メトロポリタン美術館が歩いて行ける距離ではないか。ここはスケールが大きすぎて、私の好みの現代物が少なさそうなので、今回はスキップしようと考えていたのだが、グッゲンハイムで欲求不満になったので、見たいところだけ見ることに決めて、行くことにする。

ところが、入って見るとメトロポリタン美術館のスケールは、空間の大きさも展示物の量も種類も想像をはるかに超えていた。近現代ものは覗いて、古代エジプトから始まって、世界中の絵画・彫刻・工芸などほぼなんでもある感じ。例えば、中世の甲冑などは普通数個あればいい方だと思うが、いろんな種類が20−30個はあったはずだ。集め方が半端ではないのだ。驚いたのが、正式展示していない保管庫も見れるようになっていること。展示用でなく、保管だから、絵画、器、彫刻の類が、ガラス製の特性戸棚にしまわれて、ずらーっと体育館二つ分もあろうかという場所に置かれてある、その迫力はすさまじい。どうすれば、ここまで集めるということにこだわれるのか、集められた芸術品たちよりも集める執念の方に驚きを感じてしまう。

結局、4/1ぐらいみたあたりで、足も気力も目もほとほと疲れてしまって、帰る方向に向かうのだけれど、途中展示をみるとついつい回ってしまい、そのうちに方向感覚もなくなってあらぬ場所を歩きまわり、結局は、3/4は(見たというより)回ったと思う。メトロポリタン美術館の唯一の欠点は、レベルの高い展示物が多すぎて、じっくり見ようという気力を失わせてしまうことだろうか。駆け足で見るものではないなと、実感。会員になっている人が多いようで、気分に合わせて、好きな展示を分けてみるのが一番いいのだろう。でも、こういう日本的せっかち観光をしてしまう人もいるわけです。企画展示を4つぐら同時に行なうことができるというスケールを想像できますか?すごいものです、ほんと。
フランク・ロイド・ライトの建築した部屋まで展示されてあるのもびっくり。

帰りの地下鉄の駅で、中年4−5人組の男女が、ビートルズのコピー演奏をやっていて、えらい人だかり。そんなにうまいわけではないが、気持ちを込めて歌ってるのと誰でも知っているビートルズなので、集まる気持ちは分かる。ヘイジュートは、みんなで合唱になってしまうというのが、ここはやはりニューヨークかと思わせてくれた出来事でした。

帰りに大失敗をしたのでした。気に入っていて6−7年使っているLumix LX3というコンパクトデジカメを、たぶん、受付前の人が大勢いる長椅子に置き忘れてきてしまったこと。一眼レフをしまったり、コートを着たりするうちに、疲れもあってカバンに入れなかったのだ。がっくり。けっこういいショットを撮っていたし、カメラ自体への愛着もあったし。念のため明日電話かけてみるけど、アメリカだから???美術館に来る人は疾しい心の人は少ないだろうと思って、ラッキーを願おう。

ホテルに帰ったら、20:30。とてもじゃないが、食事にも、ライブにも行く気分にはなれない。いまこのブログを書いているのに、かれこれ1時間近くかかっているから、さっさと寝て、明日の英気を養おう。