マロコ、さようなら、ありがとう

6年間家族だったシマリスのマロコが、一昨日突然あの世へ旅立ちました。特別の存在でした。心の整理なぞ全くついていませんが、二日前からのあるがままの想いを残しておこうと思います。マロコへの惜別のために。どんなに特別な存在だったか。

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2012年4月13日 19:20 都内
さっき、マロコ、 が死んだ、という、妻からの、悲痛な連絡、家族の宝が、死んだ?!わたしたちのシマリス、かわいい可愛い小さなシマリス、マロコ、... 。

ショックで現実感ない、急いで帰りの電車に乗った。茫然もしてない。こうして何か書いてるだけ。電車に乗っている。起こったらしいことに身構えてさえもいない。ただ電車に乗っている。何をすればいい?

今は、マロコの写真は見るまい、見ても現実感ない。帰りを急ぎたいけど、いつもの電車に乗るだけ。何を喪失したのか、今はわからない、感じない。妻が悲痛に暮れてただただ待っている。自分を責めたらダメだよ。早く帰るだけが今できること。

2012年4月13日 19:50 横浜
あぁ、変わり果てたマロコの姿を見なくてはいけないんだ、見てあげなくてはいけない。マロコを、長生きさせられなくてごめんね、と、一緒に過ごしてくれてありがとう、と送ってあげなくてはと、覚悟だけ決める。

まだ電車に乗っている。妻と顔を合わせたら、マロコの姿を見たら、どっと溢れて来るに決まっている。目をつぶらないと、まだ電車の中なんだ。

本当なのか?などと問うまい。どうすれば受け入れるのかなども、虚しい。待っているのは事実だけなのだから。いいかげん早く着いてくれ!

2012年4月13日 20:25 海老名
最後の乗り換え。本厚木に着いたら自転車だ。雨が小降り。傘忘れた。ちょうどいい。ようやく着く。電車終わり。


2012年4月14日 0:00自宅
マロコが亡くなって8時間あまり、帰宅して3時間経った。
亡骸を見て、抱いて、茫然、ショック、男だって泣くさ、家族の星だったんだから。
今朝も新鮮な餌を上げ、哺乳瓶を抱えるようにスポイトに手を添えて薬を飲む姿を目にしたばかりだったのだから。今は大好きなフリース生地の布に包まれて横たわる。

妻のショックは計り知れない。事故が起きたのだ。病院に連れて行ったけれど、すでに心臓も止まっていたとのこと。6歳になったばかり、体は弱いけれど、もっと長生きさせてあげようと話していたのに。背骨を痛め、毎週キセノン照射をやって、薬を飲ませ、もう前のように痛みで鳴くことがなくなったのに。尻尾の先が化膿してきたので思い切って切断し、順調に回復して元気が出てきたばかりだったのに。寝室を開放し、昼間マロコが伸び伸び遊べるように、妻が遊び場風に改造し始めたばかりだったのに。この数日、昼間見違えるように元気に跳ね回るようになったと聞いて、今度の週末はその様子が見れると楽しみにしていたのに。

明日は埋めてあげよう。今日と明日が、マロコの姿を見れる最後だから、たくさんたくさん写真を撮った。気持ち良さそうに寝ている冷たい体はもう動かない。だから、瞑ったままの目も、鼻も、髭も耳も、前足や後ろ足や、背中のシマシマも、短くなった尻尾もフサフサのお腹も、全部アップで撮ってあげた。もう会えないからね。明日からは土に帰るのだから。

今晩は、最後にいっしょに寝よう。いつものお気に入りの寝床で。毎朝は、寝床から出すと手の中で丸くなって二度寝を欠かさなかった。明日朝も、少しだけ手の中で寝ようかね、もう体は丸くなれないけど。 先代のネムネムがなくなったときもそれはそれは悲しかった。あんなに悲しい経験はもう嫌だ、と思ったのに、小リスのマロコにあったばかりに、その頼りなげな姿に、妻が本能的な選択眼で飼うことにしたのだった。

直後に、脳炎であることが発覚し、危うく一命を取り止めたのは覚えているかな。真っ直ぐ立てなくなって、クルクル回り始めた時は、動転してしまったものだ。その時お世話になった動物病院がかかりつけ医になった。先生はマロコの病気を全部知っている。あまりにも何度も病院にお世話になるものだから、冗談で日本一高いシマリスになったかもしれないねと、妻とはよく話していた。お金には替えられないマロコが家族に与えてくれることへの、いや、家族としての当然のマロコへの想い。


4月14日17:00
今朝マロコの体が柔らかくなっていたので、優しくゆっくりゆっくり丸るくしてあげた。これでいつもの通り、今日も手の中で寝れるよ。最後だからゆっくり寝よう。

ネムネムの時は火葬にしたけれど、形だけ丁重で仰々しい動物火葬場で焼かれるのを待つ時間はつらすぎた。寒々したコンクリートの建物中で、小さな骨が箒で納められるのを見るのは本当に忍びない。
マロコはプランターの土に埋めてあげて、家に置くことにする。マロコは一生をこの家で過ごして、マロコの世界はこの家だけだ。

午前中、花柄の陶器のプランターを買ってきた。家族みんなで順番に、いつものように丸くなったマロコを手の中で抱いてあげて、葉っぱを敷き詰めた上にそっとおく。小さな花をたくさん敷き詰めて、まわりに、大好きな食べ物を。最近の主食むき栗、おやつアーモンドやクルミ、新鮮なブルーベリー、半分に切って食べやすくしたイチゴとぶどう、たくさんあるよ。最後はいっぱいの花で覆って、上から土をかける。家族みんなで手でかけてあげた。ありがとう、マロコ。ゆっくりゆっくりお休み。

最後を看取ってくれた動物病院の先生に、長いことお世話になったお礼をする。マロコを何度も助けていただいて、この1年は毎週キセノン照射で通院していた。尻尾の手術が順調に回復し、抜け毛も治ってきれいな毛並みになり、よかったねぇと話していた矢先だったから、先生と話をしたとたんに、たくさんの思いが一度機に湧いてきて不覚にも突然涙が溢れ出てくる。

お酒飲みながら、残ったアーモンドを食べる。


4月15日12:00
ゆっくり起きた。毎朝寝ているマロコを横の寝床から出して、手の中で二度寝させるのは、できなくなってしまった。顔を洗って歯磨きした後の朝一番、マロコの食事の用意もできなくなってしまった。小さなスポイトに入った薬を哺乳瓶のように飲ませることも。
土葬したプランターの中に、大好物のヨーグルトを入れるのを忘れてしまって本当にごめんよ。今朝、プランターの前に食べ物を少し用意した。いつものヨーグルトの小瓶からスプーン半分出して小さな器に入れる時、また不覚にも涙する。

私の机がある部屋はマロコの遊び場と共用だったから、いつもだと週末は綺麗に掃除して、私がパソコン作業してしている横で、マロコがちょろちょろ遊び回る。今朝も、机の上に敷いた小さな絨毯の上には、隠した栗、半欠けのアーモンド、ブルーベリーの食べかけ、干からびたイチゴのかけら、オシッコの跡など、つい二日前まで過ごしていた痕跡がそのまま残っている。とても片付けられるものじゃない。いつまでも残しておきたいけれど、いつかは片付けないといけないのだろう、いつかは。悲しいけれど、マロコのいない暮らしに、否が応でも慣れてしまうんだろう、いつかは。