10年後の自分に選択肢を与える−情報キュレーション実践(その2)

二日ほど前に、その1を書いた。一旦公開してしまえば、気が楽になるもので、変な不安は消えてしまった。さて、続きのその2を、以下に記す。少し長いですけど、お付き合いいただけると幸い。

その1を読んでいない方は、「10年後の自分に選択肢を与える−情報キュレーション実践(その1)」を先にお読みください。

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(3)どうやって
次に、どうやってやるかを書く。ここでIT登場。世の中の変化は悪い話ばかりでもない。皆が書いているように、5年前には、TwitterFacebookEvernoteも世の中にはほとんど認知されていなかったし、iPhoneiPadスマートフォンも存在しなかった。

これらITツールやしくみたちのおかげで、情報源がメディア企業から個人へ、人と人とのつながりが格段にダイレクトになり、新しい価値創造の急先鋒になっている。これからの5年でどんなに便利で面白い技術やしくみが出来てくるかは、予測できないし、楽しみでもある。つい先日は、南極にいる友人とFacebookでやり取り出来てしまった。20数年ぶりの友人もみつけた。場所や距離はもちろん、時間の隔たりさえも、すっとつないでくれるわけで、はもはや何の障害にもならない。ネットだから当たり前と言えるのも、今そういうしくみを持っているから平気で言えるのであって、数年前でさえ考えられなかったはず。

ビル・ゲイツスティーブ・ジョブズを生んだ、我ら50代は、IT第一世代と言ってもいいだろう。一世代上の団塊の世代はITには十分に慣れ親しんでいるわけではないから、60-70歳代を魅力的に活かす手段としてITを使いこなせるのは、われわれ世代が”人類の歴史の中で”で初めてになる。だったら、これを楽しく有意義に使いこなすのは、使命というべきではないか?ま、それほど大上段に構えなくても、今までの世代が手にしていなかった面白いことができそうなわけだから、新しいことにチャレンジするネタが増えるのはいいことなんじゃないか、と気軽に考えれば十分だ。

視点を変えて、ITが浸透してきたせいで、密結合社会から疎結合社会へ移行しつつあると見ることもできる。疎結合社会では、個人とそのIT友人同士でのつながりや影響力の強さ・緩さがアメーバのようにダイナミックに変化・成長し、従来の密結合社会では予想もできない動きがあり得る。アラブの春が、その一例。疎結合社会では、多数のコネクションを持つ情報ハブが重要な役割を果たす。本構想は新しいユニークな専門情報ハブ集団を作るという意味でもある。


(4)何を
さて、ようやく何をやるか、を書く。ここが本題。私の仕事は、計算工学的シミュレーションやCAEComputer Aided Engineering)と呼ばれる技術に関わっている。世の中的にはとても狭く専門的な分野。大学での研究成果、ベンダーの開発、企業での応用と実用化、という役割で技術が動いているわけだけれども、問題は、実用レベルで使いこなすまでに、人が育つのに何年も要し、ノウハウが属人的で、機密性が高いので、技術の成熟スピードが、製品開発スピードに比べて遅いということ。多岐に渡る課題が山積み状態。十年一日のごとくというけれども、この分野では10年前とさほど変わっていない現実というのも山ほどある。そういった問題を解決するというとき、その方策は次のように分類できるだろう。

1)技術・道具
ソフトやツールの形として、作れるもの、あるいは、買えるもの。ソフトウエアやハードウエアベンダーの主なビジネス領域。

2)技能
正しく使いこなすための知識や経験に基づいたルール。形になりにくく、最も属人的な知的資産なので、買えないし、人を育てるしかないところ。企業が持っている非物的価値の大きな部分。技術コンサル・ビジネスが可能。

3)方法論
技術を使う上での前提となる、基本的な情報、始める手順、視点、気付き、考え方、つなげ方、全体像の捉え方、抽象化、他分野からの学び、などは、経験と広い知識を必要とするコンサル、アドバイザーの領域。


最初の二つ「技術・道具」と「技能」は対価を払えば基本的に入手できる。開発力があればソフトを売れるし、優秀な技能があれば、転職・再雇用もしやすくなるというもの。金は動くし、ビジネス・プレイヤーは無数。

しかし、最後の「方法論」だけは、形にもなりにくく、人にも付きにくい。ここが重要なところなのだけれど、方法論を持たないために、技術も技能も効果を発揮せず、無駄にお金と人材を使っている、という現場が多いのではないか。早く着けと指示されるだけで、船頭なしで船を漕いでいるような状態だ。繰り返すが、「経験と広い知識を必要とするコンサル、アドバイザーの領域」であれば、定年後を想定した新たなビジネス・フィールドはここになるのではないか、新しいビジネス・モデルを築ける可能性を秘めているのではないか、というのが、今回の発想の原点。しかも、そういうノウハウを持つ社員や管理職が年々減少していくのは確実であって、部門の中にほとんどいなくなってしまうという状態だってあり得る話だ。今もすでにそうかもしれない。

50代にもなれば、誰しも専門分野でそれなりの情報ソースや方法論を持っている。企業機密はもちろん除いて、多くの情報ソースは、すでに公開されている本・雑誌・論文・Webが多いはずだ。従来であれば、それを知っていることが虎の子情報であって、他人が気付いていない情報を右から左に伝えるだけで、それなりの価値はあっただろう。(ところで、スパイ活動で収集される情報の8-9割は公開情報であるという有名な事実はご存知?)

また企業からしても、共通基盤となる技術で競争しても無駄な時間とコストを要するだけで、競争優位を確保できる技術開発に時間とコストを投入したいはずだ。であれば、共通基盤技術のベースとなる公開情報やノウハウがすぐに手に入るのであれば、皆が楽になる。
公開されてはいるけれど、その意味や価値が世の中に十分には気付かれていない・活用されていない専門情報を、世の中が便利に参照し活用できる仕組みを、誰でも使えるITツールを利用して作り上げていこうではないか、しかも、そういったコツコツ仕事をできるのは吸収している現役世代ではなく、現役を育てる立場にある50代からたっぷり時間のある定年後世代であって、あわよくば、将来の我々のためのビジネス・モデルができれば、社会貢献もしながら楽しく充実できるのではないかというのが、私の目論見で、うまくいったならば「人材と技術と知恵の活用コミュニティ」とでも名付けようか、とまで考えてはいる。この想いと構想に共感し、協力し、当事者にもなってくれる仲間を招集したいというのが、私のこの長い長いメッセージの目的です。うまくいけば、斬新なビジネス・モデルを作れる可能性も秘めているし、そこまで目指したい。
どうすればいいかは、(5)に加えて、最後の(6)アクションまでをお読みいただきたい。


(5)しくみ
ここでようやく、冒頭の「情報キュレーション」という言葉で、いろいろなことが一本の線でつながった、という話に戻ろう。検索エンジンは、単にキーワードで検索してくれるだけだけで、(今のところは)意図まではわかってくれない。ところが、「情報を収集し、選別し、意味づけを与えて、それをみんなと共有すること」=「情報キュレーション」ができれば、情報の有用性は一気に高まる。似たような専門分野の人間の情報キュレーションの集合体が出来、どんどん増殖していったら、物凄いことになりそうだと思いませんか?私はそれを想像しただけで、ワクワクして来る。

しくみとして何を使うかを書く前に、私が使っているソフトを書き出してみよう。

私の場合Twitterはそれなりに楽しんでいて最近は自分の写真を毎日アップすることを始めた。フォロワーツールなんかは一切使わないので、フォロワーさんはそれほど多くはなく、450あたりを行ったり来たり。ペットのシマリス飼い主さんが多いのと、写真を毎日アップしているのが特長か。

Facebookはといえば、3-4年ほど前に登録だけして掘っておいた時期が長く、最近、Twitter友達や古い友人つながりが増えてきて、2012年2月時点で数十名ほどの人と”友達”になっている程度。まだ、積極的に投稿しているわけではない。意外な共通点だとか、趣味だとか、いい情報見つけたというのもたまにはあるけれど、だからといって、わざわざそれだけのためにFacebookを積極的に使う理由にはならない、というのが正直な感想と状況。いってみれば休眠状態のFacebookを、今回の目論見では積極的に活用してみたい。Twitterでは機能的にも140文字制約の上でも役不足だし、Facebook人口は急激に増えているから、ここが窓口に相応しそうだ。

Google+は、CAE関連のTwitter友達数人から招待を受け、昨年アカウントだけ作り、その後は何もやっていない。ただ、これからやろうとすることは、検索性の比重が大きいので、FacebookよりもGoogle+の方が適しているような気がしている。後々のことを考えこれから使ってみないといけないかもしれないけれど、今は完全休眠状態。

Evernoteはとても有意に使っていて、これが今までなかったことが信じられないぐらい、必須ツールになっている。昨年、共有機能が新しく加わったことが気になっていながら、それまでは誰かと共有したい特別な情報を持ち合わせているわけではないと思い込んでいて、自分DBとして活用しているだけだった。しかし、今回の目論見には、ぴったりで、Evernoteの共有機能をコアにするつもりだ。

あとは、ブログを書いているHatena Diary。最近は、自分で書いた記事がほとんどなく、Daily Twitter Logと化している。ブログは、まとまった文章を記録し、整理された形で読んでもらうのに適しているので、しかけの重要な役者。この記事のような自分が書いたオリジナル記事の掲載場所は、Hatenaを使う。

最後に、Tumblrは写真好きとしては便利だけれども、最近マンネリ化してきて使う頻度が落ちてきた。しかし、Tumblrの情報流通ツールとしての役割は写真だけではなくて、文章記事を扱うのにも実は便利。Tumblrもスパイス的に役者の一つとして入れてみるつもり。

ホントの最後に、MindManager。世の中に数多とあるMind Mapツールの一つで有償だけれど、とても便利なので仕事にもプライベートにも使っている。今回は、自分がやりたいことの全体像(マスタープラン)を整理するのにたっぷりと活用した。プランを練るのは、MindManagerがベストだ。ほんとによくできているツール。Mind Mapに興味のある人には、参考になるかもしれないので、しかるべき時が来たら、これを公開することも考えてみよう。


結論として、本構想を動かすしくみとしては、この記事を書いている2012年2月現在では、Evernote共有+Facebookという組み合わせをコアにするのがベストだと考えている。そのうち、Facebook ->Google+に移すかもしれないし、Facebookの中で完結するかもしれないし、全く新しいツールが出てくるかもしれないが、今は今。ツールは本質ではない。


(6)興味のある方、参加してみたい方へ
(6−1)私のアクション
Evernote共有に以下のタイトルのノートブックを作成済みです。誰でも見れます。

99.01 : シミュレーション・設計・つなぐ技術
https://www.evernote.com/pub/tenshan/99.01_Simulation_Design_Link

私のブログからの転載記事を中心に、本日現在で20本弱の記事を選び、アップロードしてあります。見出しを整理し、順番に読みやすくしました。これから、関連する論文や外部の”入手可能な”情報を順次増やしていき、それをFacebookにて通知します。また、タグを付けていくつもりです。一通り手持ち情報をアップロードしたあとは、日々追加していくモードに移ります。

当面は集客的要素もあるので、”世界中と共有”なので誰でも見れる状態ですが、ある程度人数が増えたら、”特定のユーザと共有”に移行する予定です。


(6−2)賛同する方へのお願い
さて、いよいよご賛同いただける方々へのお願いになります。まだ、海のものとも山のものともつかない状態ですから、過度な期待はせずゆっくり立ち上げます。Facebookを利用してもらうだけでいいんです。

  • Facebookの友達で、このテーマで私とコミュニケーション取りたい方

”いいね”ボタンでもいいですが、できれば”シェア”を押して、「グループに入れて欲しい」とコメントしてください。
数人集まったらすぐにでも、”グループ”を作りメンバーに登録します。どんな名前にするか、まだ決めてませんが、私の専門分野に近いテーマを想定しているので、Tech_Innovationとでも、しようか、でも協賛メンバーしだいでは柔軟に考えるつもりです。分野は狭めない方がいいかもしれませんね。

人数が増えてきて、意図が浸透し、コミュニケーションがよくなってくれば、その中からわたしと同様に、Everote共有に情報をアップする方が出てくるでしょう。ようやくコアメンバーの誕生です。その時ようやく卵からヒナになります。ヒナに孵るのが最短いつになるのかは予測がつきません。数週間かもしれないし、数か月かもしれない。足の速い世の中ですから、半年たっても私以外に誰も現われなかったら、世の中にマッチしていないか、早すぎるか、どこかで何かを間違えたか、ということになるでしょう。ともあれ、やってみないことにはわかりません。

  • Facebookを使っていて、私の”友達”ではないけれど、このテーマで私とコミュニケーション取りたい方

Facebookの友達リクエストをお送りください。で、グループ参加希望いただだければ、なお、うれしいです。
アカウントは、https://www.facebook.com/keiji.kudoです。

  • Facebookの友達になるよりも、とりあえず様子見してみようという方

Facebookの「フィード購読」をkeiji.kudoにリクエストしてください。
”友達”にならなくても、投稿を読むことができる機能だそうです。私のFacebookでONにしたので、リクエストできます。

  • Facebookのアカウントを持っていない方は、これを機にFacebookに触って見るのはいかがでしょうか。

フィード購読とは?http://www.facebook.com/about/subscribe
フィード購読のわかりやすい説明http://facebook-guide.jp/archives/2306.html


えらく長い長い企画のお知らせになってしまいました。年末から、頭を整理しながら、書いてきました。まずは一歩踏み出し、コツコツと続け、面白いことが生まれるといいな、という思いだけです。

10年後の自分に選択肢を与える−情報キュレーション実践(その1)

なにはともあれ、こんな大層なことを書いて公開してしまって、大空振りするかもしれないとか、予想もしない反応が出てきたらどうしようだとか、不安がたくさん過ぎっている。でも、この想いと構想をいつかどこかで書いて実行に移さねば、5年後10年後に本当に後悔するにちがいないという気持ちの方が強いので、まずは世の中にちょこっと置いてみようと思う。このスピードの早い世界だし、似た構想はおそらく、誰かがやるはず、いやすでに着手されているかもしれないのだし、だったら、同士が増えていっしょにできるんだったらやってみよう、そう前向きに考え、ほとんど文章を書いてしまったいたのだけれども、やっぱりしばらく踏ん切りがつかずにいた。


そしたら、1月中旬に立て続けに、「10年後の選択肢」という視点を持つとてもいい文章を二つ発見してしまった。

朝日新聞に毎日曜日、仕事力というコラム欄があって、ビジネスの第一線で活躍している人たちのいい言葉がたくさん載っている。2012年1月15日には、民間人で初めて公立学校の校長先生になってたくさんのユニークな改革を行ったことで有名な藤原和博さんが、「人生は一山で終わらない」と題する記事を書いていた。次に引用する文章を読んで然りと思った。

10年後のために右足を踏み出して、まず今年1割それをやっておく。来年は左足を出して2割、再来年は3割とスケートのように足を踏み換えながら進み、裾野を作っていくイメージです。

また、同じコラムシリーズの1月22日の記事では、

周りに有り余るほどになった物や情報をどうやって、自分の知恵で編集していくか。その一人ひとりのフィルターこそが、これからの仕事力なのではないでしょうか。

とも書いている。


二つ目は、ソーシャルメディア活動を精力的に実践されている大元隆志さんが今年から始めたAssioma's メールマガジン第一号(2012年1月13日発行)の冒頭言にある言葉。

人生80年の時代。定年になってもあと20年以上人生は続きます。仕事だけの人生では無く、夢とファンと共に歩む仕事と夢を両立させた人生がテクノロジーの進化によって、実現可能になりました。

夢を見るために、仕事を辞める必要も無く、起業する必要も無い。昼はサラリーマン、夜は「創作者」として夢を追う。閉塞感の漂う日本の社会で、自分で夢と絆のセーフティネット作りを行い、お金と心、両方が充実した実りある生活を行う。

どうです?この二つの記事は十分に私の気持ちとぴったりと共鳴。なので、躊躇していた私の背中を押してくれたのだと思って、ブログとFacebookに出してみることにした。とても長い記事なので、私の意図とやり始めたことを手っ取り早く知りたい方は、まず、

99.01 : シミュレーション・設計・つなぐ技術
https://www.evernote.com/pub/tenshan/99.01_Simulation_Design_Link

をアクセスしてしていただけると、中身がわかります。Evernote共有を活用ってところが、ミソです。


(1)発端
元旦生まれの私は、今年2012年で53歳になった。50代という歳は、仕事の実績には自負を持ちながらも定年後の人生計画を否応なく考えさせられる年頃だ。そんなせいかどうか、実は、昨年後半あたりから、自分の中で何かを整理しなければいけないという強い思いが湧いてきていたのだけれど、なぜそんな思いが出てきたのか、何をどうやって整理するというのか、ぼやけた状態のまま数か月が過ぎた。

と、昨年12月のある日、「情報キュレーション」という言葉で、いろいろなことが一本の線ですーっとつながって、私がやりたいらしいことが浮き出てきたのだった。ITジャーナリストの佐々木俊尚氏が、キュレーションを

情報を収集し、選別し、意味づけを与えて、それをみんなと共有すること

と定義づけ、著作やツイッターなどで紹介していて、時代を表すハマる言葉だとは思っていたのだが、自分の中に明確に意味を持ってストンと腹に落ちた瞬間が訪れたのだった。これまでの自分の経験や知識を、情報キュレーションという形で表現し、かつ、5年後、10年後の自分に選択肢を与える手段を考え、仲間を募り、みんなが役に立つ何かを作って見ようじゃないか、と。


(2)なぜ

「情報キュレーション」の話には後で立ち返るとして、動機的な話を少ししてみよう。

平たく言うと今の世、10年後、いや5年後でさえ何がどうなっているなんて誰にもわからない。過去5年の動きを逆に見るとよくわかる。世の中は激変している真っ最中だ。既存価値・前提・システムが崩壊しつつあり、”既存的もの”を扱う企業は、サバイバル状態だ。大きく急激に世の中の価値もしくみも変わりつつある。この5年は特に。Changeという言葉を使っていない企業は少ないだろう。ほんとに、Changeできるかどうかは別にしても。

一昔前だったらあり得た、定年後第二の人生を年金もらいながら、畑でも耕し趣味を磨いてのんびり暮らす、なんてことはまず誰も想像できまい。だからこそ、多少世の中がどうなっても対応できるように、自分の立つ場所を自分で用意し、かつ柔軟に変化・移動できる状態にしておかないと、手遅れになる。日本の強みと評されていた一億総中流の時代はとうに過ぎ去り、富や情報格差の二極化が急激に進んでいる。(今や政治格差もと言いたくなるけれど。)高齢化も二極化の流れの中で進んでいくだろう。

よほど個人ブランド力のある人やすでに個人営業で身を立てているは別にして、たいていのサラリーマンは、会社を辞めるとただの人だ。過去の役職に意味はなくなり、専門知識や経験を生かす場は消え失せる。子会社や関連会社に行けるような大企業で実績のある人は恵まれている方で、それでも5年がいいところではないか。65歳を過ぎるとたいがいは専門力を生かした仕事にはつけなくなるし、人脈も古くなり、否応なく孤立度が増えていく。80-90歳にまでなれば、家族に囲まれた余生で十分だろうが、60-70代は、健康で知識も能力もあるわけで、国や自治体や会社だって少しは活用方策を考えているようではあるけれど、全然当てにできない。60歳からの20年をどう過ごし、活かすかは、本当に自分しだいだ。

今も、毎日、毎週、毎月と確実に時間は過ぎていき、1年が経つのが実に早いではないか。”10年後の自分に選択肢を与える”という目標には、先の藤原氏が書いているように今の若い世代にも大事だけれど、特に、私と同世代近辺の人間にも、まだまだ大きな意味がある。手遅れではないはず。10年も長い、たぶん5年後。もはや同じレールはどこにも存在せず、個人がレールを引き、Changeを実践していかないといけない時代になってしまった。


ーーーまだ先があって、(6)章まであるので、二分割にします。その2を読みたい方は、こちら。

 安心できる技術−電子錠が動かなくなった話

アメリカのとあるところに本日着、それなりのホテルなんだけれども、お風呂に入ろうとしたら、どう見ても湯船の栓がない。海外のホテルには、たまに、自分が知らないだけとか、気付きにくいしくみとかあったりするから、注意深く見てみたけれども、やっぱり、どういしたって栓がない。ので、修理サービスを呼んだら、珍しくないなって雰囲気で、部品を探してきて付けて行った。直ったのはいいけれど、不思議なのは、どうすれば、風呂の栓が部屋から無くなるのかってこと。昨晩泊っていた人はどうしてたの?

で、ずーっと前に経験したことを思い出したので、忘れないうちに書いておこう。アメリカの片田舎に泊ったときの話。そこに泊るときは選択の余地がなく、モーテルみたいな外と玄関直結のホテルと、小じんまりしたホテルの2カ所ぐらい。その時は、後者に泊っていて、ある晩のどが渇いて冷たい水が飲みたくなったので部屋の外に氷を取りに行ったのでした。部屋に戻ろうと、カードを何度差し込んでも反応しなくて、でもその時は、電子式カード錠が使われ始めた頃で、そういうトラブルは何度かあったので、発行し直してもらえばいいかと、パジャマ姿で受付に行った。バイト風の女性がカードを再発行してくれて、トライしてもダメ。で、マスターキーでトライしてもらったにも関わらず、まったく反応せず。この時点で、あれ?異常事態?という雰囲気が漂い始め、彼女が何カ所かに電話を掛け始めた。なんだか、いろいろ手を尽くしているようだけれども、一向に鍵が開かず、幸いかな一階の部屋だったので、奥の手として朝になったら外から窓を外すから、別の部屋で寝ていてくれということになった。そのホテルの最上級(といっても、部屋とお風呂が大きかったぐらい)の部屋に移って、とりあえず朝まで寝たわけです。特に、その日は帰国日だったし、部屋が開かなかったらどうしようとは思って見たものの、考えてもしょうがなかった。3時ごろだったかな。

起きても、着の身着のままで、歯磨きもできないので、朝自分の部屋に行ってみたら、すでに見事に窓が外されていて、業者の人達がしてやったりといった風情で部屋に居て鍵を中から開けてくれたのは、その一瞬だけはアメリカンヒーローが目の前に的でものすごくうれしかったのだけれど、やっぱり窓を外さなきゃならないという事態を招いたあなたたち米国の技術は何なのでしょうと、思ったわけです。一方で、世界最高の軍事・宇宙技術を持っているわけだし。これが、2階以上だったら、はしご車付きレスキュー部隊登場だったでしょうかね。鍵が正しく動作するといのは、ほとんど究極の精度で保証できなくてはならないはずで、マスターキーでも開かない電子錠というのはとんでもない設計ではある、特に、ホテルという客商売においては。

そう思うと、従来の日本の技術というのは、安心できる技術が多いんじゃないかと強く感じる。昨今ロバスト設計が進んでいるのはその証左ではある。想定外を連発していた原発世界の人達は、できれば例外だと思いたいけれども、少なくとも日本的ものづくりを支えてきた技術層というのは、仕様に書かれない(想定外のことを)経験に基づいて想定して設計・製造してきた人達のはず。一方でこれからは、仕様書に書かれないことを美徳とするのではなく、どうすれば仕様書に書けるかをしっかり具体化する時代にはなってきている。