信号の機能しない交差点で自律的に止まる驚くべき車集団の生態!

今日、生まれて初めて、停電で信号機が機能していない道路を走り、驚愕の経験をした。


八王子方面から129号を厚木方面に向かって橋本あたりを走っているとき、信号機の明かりが消えていることに気付いた。129号は近隣では、大きな道路だから、信号がなくなったせいでむしろ、すいすい走れて、これはラッキーと思っていた。なんかドキドキして、車間距離も適正で、こんなに快適なドライブは久しぶり。


しかし、当然ながらすぐに気づいた。交差している何本もの道路にいる車からすると、途切れなく車が通過する129号に侵入するのは、危険で難しい。気の毒に思いながら、さりとてどうすることもできない。警察官も手が回らないと聞いていたし。と、ある大きめの交差点で、こちら(129号)側が止まっている。これはてっきり、警察官が交通整理しているんだと思って、走り始めた交差点を見回してみても、警察官は一人もいないではないか。なんと、交差点で自主的に129号側の車がストップして、交差する道路側の車の通過を待っていたのだ。しかも、まるで、信号機があるがごとく、交差車線では、直進・左折車が終了後に右折車が動いた。それを見極めておもむろに、129号側の車列がゆっくり動き始めた。繰り返しますけど、警察官はいないんです。


同じような事態に、3回遭遇した。この災害で日本人は略奪せず、暴動も起こさず、規律正しいということが、海外から大きく報道されているけれども、正直言って、ここまでとは、思わなかった。大量の車列が信号機なしに、交差点で相互に”あうん”の呼吸で譲り合うという芸当は、そうそう出来るものはじゃないと思う。心底驚いた。わたしは、どちらかというと、ことさら日本人は偉いぞという風潮には与しない方だけれども、この自律的に止まる車の集団には、すごい!というしかなかった。


この行動様式は、あたかも一つの生命体のごとく行動する鳥や小魚の集団の動きと同じだ、ということに気付けば、なお面白い。普段は、信号機というシステムに制御されている車の集団は、信号がなくなったときでさえも、あたかも車集団という生命体の脳に信号機のパターン残像が残っているがごとく、自律的に相手方の車集団の意図を考慮し、ある瞬時に止まるべき時に止まるという高度な集団行動を行っている。


こういっては誤解を招くかもしれないけれど、良くも悪くも、日本人は“躾けられ易い”民族であるかもしれない。最近は使わなくなった言葉だけれども、”村社会”や”以心伝心”という言葉で特徴づけられる日本人のDNAは、しっかりとあるんではないか、それがとても具体的に、いい面で現れたのが、交差点の現象だったように思える。これは、理屈では説明できない。複線で毎秒何台も動いている車列が、信号機も警官もいないところで、自然に止まるという現象をどうやって説明できますか???


これは、絶対に、複雑系社会学の最新テーマになると思いますけれど、私の思い込みが強いだけでしょうか。しかも、おそらく日本社会でしか、観測できない。この現象と生態を理解するのに一番ふさわしい本は、たぶんこの本→「人は原子、世界は物理法則で動く―社会物理学で読み解く人間行動」。


人は原子、世界は物理法則で動く―社会物理学で読み解く人間行動

人は原子、世界は物理法則で動く―社会物理学で読み解く人間行動


加えて、副次効果がさらにすごいと思った。そういう事態を目の前で見ると、当然自分もその車集団の一台だから、とても気を遣うようになる。自然と車間距離を開けることになるわけだ。だって、いつ何時、前の車が、交差点で止まるかわからないわけだから、皆注意を払い、距離を開けるのは自衛本能でもある。走るのが気持ちよかった理由のもう一つは、この車間距離だった。すごく安心して走れた。ということは、普段信号があるところで信号なしにすると、自律的に車間距離が開くというのが確度の高い事実だとすると、渋滞回避につながる大きなヒントになる。渋滞学への大きな提言になるのではと考えた次第。


よくわかる渋滞学 (図解雑学)

よくわかる渋滞学 (図解雑学)


停電中わざわざ車で走るのはもちろんお勧めするものではないけれど、でも、驚きますぜ!
イタリア人とインド人に、見学させてあげたいと、心底思いました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
・Copyright (C) 2010 d.hatena.ne.jp/shimamaro All Rights Reserved.
・Never reproduce or replicate without written permission
・リンクを張っていただくのは、どのページでも自由です。
・本ブログ内のすべての情報(文章、写真、動画、イラストなど)の無断転載をお断りいたします。
・引用の際には、”慣行”の範囲内で、引用先を明記してください。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~